ブログ開設から10年、訪れた展覧会の数は3000以上、カリスマ美術ブロガーTakさんインタビュー(番外編)

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これまでTakさんへのインタビューを3回にわたってお送りしてきました。今回は番外編として、展覧会巡りにまつわる様々なベストを選んでいただきました。 

――いままでご覧になったなかで最も印象に残っている展覧会ベスト5を教えてください。

Tak:展覧会ベスト5を選ぼうと努力をしたのですが、膨大なチラシファイルの初めの10冊に目を通しただけでも、欠くことの出来ぬ思い出の展覧会が10以上もありました。1994年から1997年の間に観た展覧会ベスト13(開催順)でお許し下さい。

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バーンズ・コレクション展」国立西洋美術館・東京

1994年1月22日~4月3日

「門外不出の名画展」と銘打たれる展覧会数あれど、そのなかでもこれに勝るものは未だ存在しません。セザンヌの素晴らしさに開眼し、マティスの「生きる喜び」に胸を揺さぶられた展覧会でした。因みにこの頃はまだ西洋美術館の企画展示室がなく、常設展示室で特別展を開催していました。

 

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「伊勢物語の世界」五島美術館・東京

1994年10月29日~11月27日

 『伊勢物語』には王朝古典文学のすべてのエッセンスの元が詰まっています。最も好きな文学作品のひとつです。成立して間もなく絵画化されましたが、広く知られるのは俵屋宗達の作品や江戸時代の「嵯峨本」です。展覧会は大満足でしたが、今にして思えば会期中、山根有三先生の講演会に行けなかったのが唯一の心残りです。

 

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ジョン・ケージのローリーホーリーオーバー サーカス」水戸芸術館・茨城

1994年11月3日~ 1995年2月26日

あのジョン・ケージが作曲した展覧会です。といっても理解不能ですが、ひとつの展覧会の会期中に展示作品がジョン・ケージの用意したチャンス・オペレーション(コンピューター・プログラム)によって時として観客の前で展示替えされる、偶然性に満ち溢れた刺激的な展覧会でした。※ウィキペディアにも項目があります。

 

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「フォロン展」Bunkamuraザ・ミュージアム・東京

1995年1月2日~2月12日

ルネ・マグリットの作品に影響を受けたベルギー生まれのジャン・ミッシャル・フォロンの展覧会(因みにほぼ時を同じくして新宿にあった三越美術館で「ルネ・マグリット展」が開催されました)。フォロンの名前は知らなくても画像検索すればすぐにこの絵の人か!とわかるはずです。シュールレアリスムに温かみやユーモアを加えたような作品は一度観たら忘れられないものばかりです。

 

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ギュスターヴ・モロー展」国立西洋美術館・東京

1995年3月21日~5月14日

パリのギュスターヴ・モロー美術館を中心に、オルセー美術館、プーシキン美術館から約150点ものモロー作品が大挙してやって来た展覧会。もしこの規模のモロー展が今、開催されたら大変な話題となることでしょう。ここでモローの多様性を知り、すぐさまモロー美術館へ観に行く計画を立てたほどはまりました。

 

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「エコール・ド・ニース 1950-1995」展 目黒区美術館・東京

1995年10月6日~11月10日

「エコール・ド・パリ」の作家たちを紹介する展覧会は現在でもしばしば開催され、コレクションの一部を成している美術館もありますが、ニースでもデュフィ、セザール、アルマン、そして大好きなイヴ・クラインたちが活躍しました。紺碧の空と澄んだ海の青に温暖な気候。パリとは違った作品を生み出した地です。

 

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「月岡芳年展 最後の天才浮世絵師」三越美術館・新宿・東京

1995年11月3日~11月19日

現在のIDC大塚家具の新宿ショールームがかつて新宿三越南館だったことを覚えている方、少なくなってしまいました(1999年閉店)。さらにその7階に三越美術館があったことも…。かなり意欲的な展覧会を企画した美術館でした。なかでもこの展覧会は、月岡芳年のマルチな才能ぶりを知るきっかけとなった素晴らしいものでした。約260点の芳年作品が出展されました。

 

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「マーク・ロスコ展」川村記念美術館・千葉

1995年9月23日~11月5日

日本で初めて開催されたマーク・ロスコの回顧展(翌年、東京都現代美術館へも巡回)。初期のメランコリックな具象画から、よく知る大画面の作品への変遷は目の前で孵化する昆虫を観察しているかのような感覚におそわれ背筋がゾクっとしました。開館以来「ロスコ・ルーム」を常設展示してきた川村記念美術館で開催するに相応しい大回顧展でした。作品価格が高騰してしまった今では開催不可能でしょう。

 

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「祝福された四季」千葉市美術館

1996年4月27日~6月9日

辻惟雄先生が初代館長を務めた千葉市美術館開館2年目の近世日本絵画の大展覧会。「四季」をテーマに、室町から江戸時代までの絶対に観ておきたい日本美術の作品を日本国内のみならず海外からも集めたとてつもない展覧会でした。当時日本画にさほど興味のなかった自分でも大きく心揺さぶられたこと覚えています。

 

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「エンツォ・クッキ展」セゾン美術館・東京

1996年4月27日~5月26日

 70~80年代に台頭し世界中を席巻したイタリアの現代作家エンツォ・クッキ、サンドロ・キア、フランチェスコ・クレメンテ(それぞれの名前の頭文字を取り通称3Cと呼ばれます)のなかで、最も人間の精神面を深く描いたクッキの回顧展。軽井沢のセゾン現代美術館で初めてクッキの作品を観てから強く惹かれるものがあった自分にとって、待望の展覧会でした。

 

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シンディ・シャーマン展」東京都現代美術館

1996年10月26日~12月15日

マスメディアに取り上げられる著名人のポートレートをシルクスクリーンで表現したウォーホルに対し、彼女は自らが変装・扮装しセルフ・ポートレート、つまり自撮り写真で表す手法を用います。時として整形すら辞さない覚悟で臨む様々な姿の女性像は、美しさと醜さが同居しているようです。一度ハマったら彼女の魅力から逃れられません。

 

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「松永真のデザイン展」セゾン美術館・東京

1997年4月25日~5月26日

この展覧会を観るまで、日常何気なく使っている商品にも「デザイン」というものがしっかりと入り込んでいることを意識していませんでした。当日会場にいらした松永真さんの飾らない人柄にも感銘を受け、それ以降デザインについて、もっと知りたいという欲求と共に日常生活の風景が一変しました。

 

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「コートールド・コレクション展」日本橋高島屋・東京

1997年12月26日~1998年2月17日

女性バーテンダーのアンニュイな表情が印象的なマネの『フォリー・ベルジェールのバー』をはじめとする、ロンドン大学・コートールド美術研究所所蔵の名画約130点が、日本橋高島屋に集結。ちょっと今では考えられない規模や貴重な作品の展覧会が都内の百貨店で行われていた時代でした。バブルの残滓を感じつつ、ありがたく拝見したことを覚えています。

セゾン美術館(東京・池袋)や三越美術館(東京・新宿)、伊勢丹美術館(東京・新宿)など現在では存在しない美術館で、この頃は魅力的な展覧会をしばしば開催していたものです。この他に軽井沢のセゾン現代美術館は毎年必ず夏になると通いました。今でも自分の中では現代アートの聖地であり続けています。

 

――いままでご覧になったなかで最も心に残っている作品は何ですか?

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ヨハネス・フェルメール『デルフトの眺望』マウリッツハイス美術館・オランダ

言葉にならない絵、言葉を失う作品とはまさにこの絵のことです。フェルメールの傑作中の傑作。これは日本に来て欲しくないです。現地で観るからこそ良い。※写真は『西洋絵画の巨匠5 フェルメール』小学館、2006年より

 

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『ヒュラスとニンフたち』マンチェスター市立美術館・イギリス

同じ顔をした美しいニンフが水辺で妖しくヒュラスを誘惑。この絵を観てウォーターハウスのファンになりました。

 

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俵屋宗達『伊勢物語図色紙 六段 芥川』大和文華館・奈良

『伊勢物語』第六段「芥川」の一場面を描いた作品。この後男女は離ればなれになってしまいます。恋しい女性を奪われた男が回想し詠んだ歌「白玉か何ぞと人の問ひしとき露と答へて消えなましものを」が心に沁みます。※写真は『日本美術全集13巻 宗達・光琳と桂離宮』より

 

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伊藤若冲『糸瓜群虫図』細見美術館・京都

「動植綵絵」も勿論素晴らしいけど、一点だけを選ぶとするとこれ。独特の浮遊感と「若冲の生理的曲線」(by山下裕二先生)が存分に発揮された優品。子供のころ、虫とりをした想い出が鮮やかに甦ります。※写真は『日本美術全集14巻 若冲・応挙、みやこの奇想』より

  

カルロ・ドルチ『悲しみの聖母』国立西洋美術館・東京

上記4点はなかなか観られませんが、『悲しみの聖母』は国立西洋美術館の常設展で基本、いつでも会えます。キリスト教絵画を読み解くための知識がなくても素直に「いいな~」と思える作品。1998年に西洋美術館購入(GJ!)。

 

 ――展覧会ごとに作られる図録にも、装丁やテキスト、印刷など、さまざまな魅力が詰まっていると思います。いままで購入された展覧会図録のベスト5を教えてください。  

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『ジョゼフ・コーネル×高橋睦郎』川村記念美術館 2010年

日英バイリンガル、128ページ、フランス綴じ、テキスト活版印刷。フランス綴じの袋状ページを自分でカットし中を見るタイプの珍しい図録。

http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2095

 

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『ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情』国立西洋美術館 2008年

巡回先のロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(ロンドン)でも観て図録を購入。日本版とイギリス版(別物)共に持っています。展覧会自体も生涯観たなかでベスト5に入る素晴らしい展覧会でした。

 http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1527

 

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『小村雪岱とその時代』埼玉県立近代美術館 2009年

小村雪岱に関することがこの一冊にすべて収録されていると言っても過言でなはない、資料的価値の非常に高い図録。装丁も素晴らしい。

 http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1977

 

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『ルーシー・リー展」国立新美術館 2010年

器を多数掲載する図録に相応しく、コンパクトで形状、デザイン共に完成度の非常に高い図録。本棚に置いてあるだけでも絵になります。

 http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2119

 

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Vermeer and the Delft School』メトロポリタン美術館 2001年

フェルメール作品をまとめて紹介するだけでなく、関連する画家や作品も多数紹介。超分厚い一冊。これをNYからどうやって持って帰ってきたのか、今となっては謎です。

 

――「青い日記帳」内の人気コーナー「ミュージアムごはん」では、美術館に勤務する方がおススメする美術館付近の食事処を紹介しています。一方ミュージアム内のレストランやカフェも、様々な工夫がこらされていますよね。Takさん自身の目線でおススメする、美術館内のレストランやカフェを教えていただけますか?参照:「青い日記帳」2013年4月24日の記事

Tak:まずは東日本編からご紹介しましょう。 

カフェ ダール」原美術館・東京

美術館建設当初から建物の一部として組み込んだ一体感のあるカフェ。

http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2303

 

ティールーム ジョルジェット」ブリヂストン美術館・東京

東京、京橋に根ざした人の温かさを感じるカフェ。

http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2272

 

イル・コルネット」群馬県立館林美術館

特製ハッシュドビーフとオレンジショコラケーキは絶品です。

 

Cafe 椿」山種美術館・東京

京都の老舗スマート珈琲のブレンドが飲める。展覧会ごとの特製和菓子も毎回楽しみ。これまでの和菓子がすべてアーカイブ化されています。

http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2279

 

NEZUCAFÉ」根津美術館・東京

四季折々の自然を眺めながら飲むコーヒーは格別。

http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2289

 

 次に西日本編です。

カフェレストランFusion21」金沢21世紀美術館・石川

ビュッフェ形式で食べられる本格料理。しかもリーズナブル!東西問わず、ここのレストランがNo.1です。

 

榴樹(ルージュ)」大阪市立美術館

レトロな雰囲気が最高です!

 

ミュージアムレストラン 日本料理一扇」ベネッセハウス(ベネッセアートサイト直島内)・香川

杉本博司の作品と瀬戸内海に沈む夕日を眺めつつ頂く料理は格別です。

http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1118

 

レストラン&カフェ ARTE」和歌山県立近代美術館

結婚式も挙げられる本格的レストランです。

 

カフェ」龍谷ミュージアム・京都

和雑貨の開発、販売などを手掛ける「京都くろちく」が運営しています。堀川通りに面し、立地条件抜群!2011年にオープンした真新しいカフェです。

 

 ――各々、趣向を凝らしているようですね。展覧会に行ってもカフェを利用しないこともしばしばありますが、Takさんのおススメを参考に、カフェ主役の美術館めぐりもしてみたいです。ありがとうございました。